さんれ
vs
ヒカル
一年間ホテルで過ごしてみて、どうでしたか?
回答

これといって不便だった事は無く、スタッフの方々も優しく接してくださいましたし、レストランの料理は絶品で、遊戯施設も一年の間ずっと飽きないほどに楽しめました。何より、一年間ホテルで過ごしたい、という要求を受け入れてくださった。私のわがままに付き合ってくださった。これ以上に嬉しいことはございません。
さて、問答に戻りますが、私にとってのホテルでの生活は、あなた方が学校や仕事場に向かい、家でご飯を食べて寝る、といった過ごし方となんら違いはございません。なので、どうと聞かれても答えることはないのです。
ただ、一つ、答えるとするならば、彼らは今、桜の木になっている、ということでしょうか。私はホテルでの最後の一日に願ったのです。何よりも綺麗で壮大な、猛々しい桜が見たいと。すると、なっていたのです。桜が、エントランスに、レストランに、卓球台の上に。生っていたのです。そういえば私は、幼子の頃から願ったことは全て叶ってきた。雲が降りてきて私を乗せたこともありますし、蟻がレースカーとなって壁にぶつかっていく等、にわかには想像し難いことがいとも簡単に起こっていたのです。
私はそういった生活を繰り返すうちに、正常な感覚が麻痺していたのです。ですので、ホテルで一年間過ごしたい、という願いが叶うのに驚きはありませんでしたし、その生活の中で違和感を感じたことは一度も無かったのです。
ですが、桜。私の願った通りに、のびのびと生き狂う壮大な桜。私を欺くことができない、その強烈な違和感。私は、思い出した。願いという、力を。
私のしでかしたことは、許されざる行為だ。しかし、私を裁く法は無いだろう。このホテルを出ていけば、私は無罪放免になり、これまでと同じ生活をするのだろう。私のやったことは、私しか知らない。だから、私しか私を裁けない。
私を桜にしてほしい。
彼らと、同じ時間を過ごすのだ。それが、私なりの弔いであり、私への裁きであるのだ。


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